最初に各種データを用い、大阪府内の宿泊施設の現状を確認したい。観光庁が2月28日に発表した「宿泊旅行調査2024年12月・第2次速報、2025年1月・第1次速報」によると、12月の稼働率は大阪府が全国1位であった。稼働率は全体で80.0%、2位の東京都は78.0%だ。
タイプ別にみていくと、旅館43.7%、リゾートホテル70.3%、ビジネスホテル83.2%、シティホテル80.6%、簡易宿所57.7%となる。なお、ビジネスホテルは出張で宿泊することを前提としたホテル、シティホテルは快適に宿泊したホテルであり、設備が充実している。ビジネスホテルは2位、シティホテルは1位である。
次に大阪タウンホテル協議会の資料を確認したい。大阪タウンホテルの入会条件は客室が約80室以上、かつ大阪市内にあることだ。
2023年の平均稼働率は75.4%、ADRは8,557円、RevPARは6,826円だった。ADRに関していえば2019年を上回っている。このデータは2023年のため、2024年は大幅に超えていることだろう。2024年ですら、稼働率が全国1位であったことから、2025年はより宿泊しづらい状況が考えられる。自ずと、宿泊料金も上がり続けることだろう。
それでは、大阪市内で宿泊料金が安いビジネスホテルを探していこう。調査サイトは予約サイト「Booking.com」、調査日は3月17日、宿泊日は4月17日から1泊だ。なお、部屋はシングルルーム、シャワー・トイレ付きだ。
大阪市内で最も安い地域は西成区だ。1泊4,800円となり、ダントツに安い。しかし、「西成区」と聞くと、正直なところ「治安が心配」という方もいるのではないだろうか。ここで、2024年の刑法犯のデータを見ていく。西成区は総数2,091件、犯罪率(刑法犯の総数÷人口×100)は1.98%である。大阪市内の犯罪率は1.43%なので、西成区は大阪市内の平均値を上回る。ただし、大阪市内の中心地である中央区は5.18%である。近年、西成区では犯罪率・環境整備の改善が進んでいる。今後も再開発に邁進することが予想され、西成区のイメージも大きく変わることだろう。
さすがに、西成区より安い、もしくは匹敵するエリアはない。ただし、意外と中央区にも安い宿泊施設は存在する。ポイントは大阪の最重要ルートである御堂筋ではなく、堺筋を狙うことだ。日本橋にあるビジネスホテルで1泊7,260円である。日本橋から難波へは地下鉄で1駅であり、徒歩圏内でもある。長堀橋から日本橋にかけてはビジネスホテルが多く、インバウンド客もよく見かける。
ところで、大阪ではラブホテルを改造したビジネスホテルも目につく。そのようなホテルは駅からは少し離れているが、宿泊費は安い。たとえば、京橋にあるラブホテル改造のビシネスホテルで1泊7,880円である。
とはいえ、どうしてもラブホテルの雰囲気が苦手、という方もいるだろう。ここで、ラブホテルから改造したビジネスホテルの見つけ方をお伝えしたい。まず、周りのビジネスホテルよりも、極端に宿泊費が安いことが多い。また、先述したように駅から離れている。このようなビジネスホテルを見つけた際は、予約サイトや公式ホームページにおいて、写真やレビューをチェックすることをおすすめする。
再開発が進む梅田は難波周辺と比較すると宿泊費は高いが、徒歩圏内に安いビジネスホテルがまったくないわけではない。1泊8,650円が梅田周辺(梅田から15分圏内)におけるビジネスホテルの底値といった感じだ。
意外と高いのが大阪環状線の西側、西九条駅、弁天町駅の各駅周辺だ。大阪環状線は西側よりも京橋や鶴橋などの東側の方が栄えている。そのため、西九条駅や弁天町駅は他線との接続駅であるが、ビシネスホテルはそれほど多くない。また、万博会場である夢洲に近いこともあるのだろう。宿泊費は1万円を超える。
新大阪駅周辺も宿泊費が安いビジネスホテルはなかなか見つからなかった。一方、鶴橋や東成区では1万円を下回るビジネスホテルが存在する。
改めて整理すると、大阪市内において宿泊費が安いビジネスホテルがある地域は西成区、堺筋線沿線(長堀橋~日本橋)、JR大阪環状線東側(京橋、鶴橋)となる。なお、同条件で大阪市内にある東横インも調査したが、1泊1万円を下回るところはなかった。全体的に宿泊費が上昇している印象を受けた。
このように大阪市内にも1万円を下回るビジネスホテルは存在するが、早々と満室になっている可能性は十分に考えられる。そこで、検討したいのが大阪の隣にある大都市、すなわち京都と神戸である。
まずは京都だ。京都市観光協会によると、1月の市内主要ホテルの稼働率は68.7%とのこと。これは前年の同月よりも9.4%も高い。京都はインバウンド客の増加が顕著であり、なかなか宿泊費の安いビジネスホテルを見つけことは難しそうだ。現に東横インで調べたところ、空室があるところは京都五条烏丸のみ。
しかも、1泊9,300円であり、大阪までの交通費を考えると、あまり得策とは言えない。参考までに最寄りの阪急烏丸駅から大阪梅田駅までは約40分、運賃は410円である。阪急の運賃が安いとはいえ、往復運賃を加えると1万円を超える。
残るは神戸だ。しかし、神戸市観光局によると、2024年11月における神戸市内のホテルの平均稼働率は78.7%である。
ただし、東横インで比較した場合、京都よりも空室があり、しかも安いのだ。神戸湊川公園で1泊7,700円、JR神戸駅北口で1泊7,800円である。神戸駅から大阪駅まではJRで約25分、運賃は460円だ。往復運賃をプラスしても、8,720円(JR神戸駅北口)で済む。おそらく、JR神戸駅の宿泊費の安さの要因として、神戸の中心地にあたる三宮からも少し離れていることも影響しているのだろう。
しかも神戸は京都と異なり、空港が存在する。神戸空港からJR神戸駅まではポートライナーとJRの組み合わせで約30分だ。ちなみに、神戸空港周辺にビジネスホテルは存在しない。
もちろん、神戸駅周辺には東横イン以外にもビジネスホテルが多数存在する。大阪市内でビジネスホテルが見つからなかった場合はJR神戸駅周辺も探すことをおすすめする。
最後に阪神間、京阪間についても言及しておきたい。阪神間(芦屋・西宮・尼崎)、京阪間(茨木、高槻)にはビジネスホテルが大変少ないのだ。東横インもこれら5都市のうち、存在するのは尼崎のみだ。
繰り返すようだが、大阪以外でビジネスホテルを探す際は京都、神戸といった大都市単位で探す方が効率がいいように思う。
著者・写真撮影:新田浩之
2016年より個人事業主としてライター活動に従事。主に関西の鉄道、中東欧・ロシアについて執筆活動を行う。著書に『関西の私鉄格差』(河出書房新社)がある。
(取材・TEXT:新田浩之 編集:藤冨啓之)
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